シンコペーション (以下シンコペと略す) のある曲がうまく歌えないという人がかなり多い。 特に団塊の世代の辺りまでの世代は、若い頃の曲にシンコペを使った曲をあまり聞いていなかったり、自分で唱ったことがない人が多く、かなり難しいようである。 かく言う私も戦中生まれなので、同じような状況である。 しかし、合唱を指導する立場であるため、歌えませんという訳にはいかない。 そこで、それなりに工夫してきた経緯がある。 本稿では、その工夫の仕方を紹介し、シンコペの苦手な人の一助になればということで、解説を試みる。
- 4拍目が次小節の1拍目まで伸びて、強に変化する場合 (4+1型)
4拍子で言えば、本来「強、弱、中強、弱」で刻まれるリズム、便宜上強を f、中強を mf と記載すれば「f, .., mf, ..」が基本である。 この4拍目の音を伸ばして二分音符とし、次小節の1拍目まで伸ばす。 ただし、小節を跨がる音符は表現できないので、表記上は図の第3段目のように、4拍目も、次小節の1拍目も4分音符で表記し、タイで結ぶ。 シンコペとは、この際、前小節の4拍目に強が移動する状態を言う。 つまり関係する2小節の強弱を記載すれば「f, .., mf, f | -, .., mf, ..」となる。 これには種々のバリエーションがあるが、順次、以降に説明していく。 この練習法は次のように行う。 練習の際は1段ごとに行い、複数の段を連続して歌うことはしない。 各音は可能な限り、音の長さ一杯伸ばすこととする。 また、以後のすべての練習の際、音符であろうと休符であろうと、絶えず手を4拍子で叩きながら歌うようにする。- 第1段: 通常の4拍子
- 第2段: T3 (T 小節 Takt の略) の4拍目の「ターン」->「ター」に、T4 の1拍目を「アーン」に読み換える。 この際、T3 の4拍目は f に、T8の1拍目は p に変えていく。
- 第3段: T5 の4拍目と T6 の1拍目を一つの音 (2分音符) と感じるように、「ター」+「アーン」->「ターン」にしていく。一つの音と感じるまで、何度も行うこと。 なお、実際の歌い方は「ター」+「ーン」のようであるが、楽譜の表記は「タ」+「ーン」や「ター」+「ン」と書かれたりする。 【注意】英語などでも「Ta-」+「-n」と歌うが、表記は「Tan_」+「_」である (単語が2拍目以後にも続く場合には「Tan-」+「-」と表記する)。 英語表記に合せて「タンー」+「ー」などと歌わないように。
- 2拍目が3拍目まで伸びて、強が移動する場合 (2+3型)
4/4拍子の曲で、2拍目の音を伸ばして二分音符とし、3拍目まで伸ばす。 この際、中強は前小節の2拍目に移動する。 図の第3段のように「f, mf, .., ..」となる。 なお、この図では、偶数小節は前小節を繰り返して記載した。 以後、練習法は前のケースとほとんど同様であるので、説明は省略する。 - 4拍目が8分音符2個で、1.5拍伸びる場合 (4.5+1型)
4/4拍子の曲で、4拍目が八分音符2個で、その二つ目を1.5拍伸ばす。 この際、図の第3段のように、次小節の1拍目の強が一つ前の音符に移動する。 - 2拍目が8分音符2個で、1.5拍伸びる場合 (2.5+3型)
4/4拍子の曲で、2拍目が八分音符2個で、その二つ目を1.5拍伸ばす。 この際、図の第3段のように、3拍目の中強が2拍目の二つ目の音符へ移動する。 - 実践的ケース:「ほらね、」の T13-14
実際の楽譜を見ると、さらに種々のシンコペが現われるが、上記の4つのケースを練習しておけば、概ね対応できる。 次の図の第2段を見てもらいたい。 T1 と T2 の間、および T3 と T4 の間に 4.5+1型のシンコペが計2箇所存在する。 さらに T3 の中に 1.5+2型のシンコペが1箇所存在する。 上2段を繰り返し練習し、第2段を4拍の手叩きと合せて正しく歌えるようにして欲しい。 続いて第3段であるが、これは「ほらね、」の T13-14 であるが、丁度、上段を2倍の速度にしたものになっている (最初の音「は」は前小節の「雨は」の「wa」である)。 上段のリズムが取れるようになっていれば、下段のリズムを取るのは簡単である。 ただし、強弱は若干異なる。 最初は遅く歌い、慣れてきたら、上2段の1小節と同じ時間で1小節を歌えるようにする。 - 実践的ケース:「ほらね、」の T9-10
次の図の第2段を見てもらいたい。 4個の小節の各間3箇所で4.5+1型と4+1型のシンコペが存在し、強拍の移動先が8分音符の場合と4分音符の場合が混在している。 上2段を繰り返し練習し、第2段を4拍の手叩きと合せて、正しく歌えるようにして欲しい。 続いて、第3段であるが、これは「ほらね、」の T9-10 であるが、丁度、上段を2倍の速度にしたものになっている (なお最初の音「は」は前小節の「鳥は」の「wa」である)。したがって、上段のリズムが取れるようになっていれば、下段のリズムを取るのは簡単である。 ただし、強弱は若干異なる。 最初は遅く歌い、慣れてきたら、上2段の1小節と同じ時間で1小節を歌えるようにする。 -
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