放送大学 岡部 洋一
okabe (at) u-air. ac. jp最終更新日: (起草: 2004年3月18日)
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[A] 電磁気学とは、電荷同士に働く力から始まり、 最後には電磁波までを含む統一的な物理体系になっています。
電磁気学をどこまで理解したいかによって、必要な概念は変わってきます。 決まった位置に置かれた点電荷の作る電場だけの計算ならば、 クーロンの法則だけで計算できますが、 分布した電荷や電流の作る電磁場の計算には 体積積分や線積分の概念が必要となってきます。
また、導体上の電荷や電流は、 導体間の位置関係によって電荷や電流の分布そのものも動いてきます。 こうした位置不定の源の作る電磁場を計算するには、 簡単な場合でも発散積分や回転積分の概念が必要となり、 一般的には微分方程式に頼らざるを得なくなります。 当然、それらの方程式の基礎となる div やrot も必要となります。 さらに電磁波などを理解するには div や rot の概念は必要不可欠となります。
[A] 残念ながらありません。 定量的なことを一切知らなくてよいのならば、可能です。 しかし、お話だけの概念だけしか伝達できません。 例えば、クーロンの逆二乗の法則を言わないで、 電荷と電荷の間に力が働くことを説明するようなものです。 したがって、ある程度、深く極めようという人は勉強してください。
[A] できます。 クーロン自身も、静電気を帯びさせた二つの玉の間に働く力を精密に測って、 逆二乗の法則を発見しました。 下敷きで髪の毛を擦ると髪が下敷きに引かれて引かれますよね。 あの静電気を、もっと小さな物体に誘導して、 引かれる力を測ればよいのです。 なお、クーロンよりも先に、 キャベンディッシュがもっと素晴しい方法で逆二乗の法則を発見し、 逆二乗の 2 が、数桁の精度で 2 であることを示しています。 ただ、この方法は数学の知識がないと理解できない方法です。
[A] 厳密にはできません。 この法則は、 任意形状の導体の上を流れる電流の作る磁界を予測した式だからです。 例えば直線電流など、特定な形状に対しての導体に対する実験はできます。 元々、ビオサバールの法則は、 磁石の磁極間に働くクーロンの法則の力と電流と磁石の等価性を利用して、 電流間に働く力を計算した結果です。 したがって、理論的な結論です。 磁極間に働く力は静電気のクーロンの法則と同様にして、実験可能ですし、 磁極間に働く力が逆二乗になる限り、磁石と電流の等価性より、 この法則は正しいものです。 もちろん、まだこの法則を破るような実験結果は見出されていません。 (詳細)
[A] 電気力線って知っていますよね。 正の電荷から始まり負の電荷に向って描かれる曲線群です。 このように、始点があって終点がある場の場合に、 ある特定の場所からどのくらい力線が出ているかを計算する手法が 発散積分です。
[A] 回転とは力線がぐるぐる回っていることを示すものです。 例えば直線電流の作る磁場は電流の周りをぐるぐる回っていますよね。 この回転の状況を調べるには流れの中にピンポン玉のようなもの (閉曲面) を入れ、そこに働く回転力を見ればよいのです。
もう一つ回転を定義する方法があります。 それは流れの中に輪ゴムのような閉曲線を入れ、 そこに働く力を求めるものです。 これが線積分による回転の定義です。
[A] 前者が三次元の囲みに対して、後者は二次元の囲みなので、 対応していると言えないことはないのですが、幸いなことに、 「三次元回転積分については、内部の総電流量とμoで比例します」
[A] 極めて微小な閉曲面を対象にした発散積分のことです。 ただ、ゆるやかに変化しているベクトル場の発散積分は、 その閉曲面の囲む体積に比例するので、体積で割ったものを div と定義します。
[A] div と同様に、極めて微小な閉曲面を対象にした回転積分のことです。 ゆるやかに変化しているベクトル場の回転積分は、 その閉曲面の囲む体積に比例するので、体積で割ったものを rot と定義します。
[A] まず、理屈っぽい観点から言うと、量子力学の波動関数は スカラーポテンシャルとベクトルポテンシャルを直接感じて変動することが 知られています。 単純な電場や磁場から計算した結果と異なる動きをする場合があります。 量子力学のような微細なサイズだけに限らず、 超伝導のような巨視的量子効果が支配する場合も ベクトルポテンシャルを直接感じます。 普通の導体材料しか興味ない場合には磁場で計算しても、 同じ結果が得られます。 ただ、場の計算としては、磁場の計算より、 ベクトルポテンシャルの計算の方がずっと簡単なので、 磁場解析の専門家の多くは、 ベクトルポテンシャルを介して磁場を計算するようです。 特にインダクタンスの計算は ベクトルポテンシャルの方が直接的に計算できます。 (詳細)